「? 何かおっしゃいましたか?」

「あ、いや。陛下といえば、エリック殿下とはその後仲良くしているのか?」

「? 学園で会えば少しお話をするくらいです」

「リュシエンヌはエリック殿下の事を、その、なんだ、あー、あれだ、お慕いしていたりするのか、な?」

 眉を顰める……お父様ってば何を仰るのかと思ったら……

「そんなわけありませんでしょう? だってエリック殿下はコリンズ子息との婚約破棄の立会人でしたのよ? それもコリンズ子息の友人としてですよ? お父様ったら! 冗談ならもっと面白い冗談をお願いしますわね」

 最近流行りの親父ギャグとかいうものかしら? お父様も流行りに乗ったのかもしれませんが、笑えない冗談は不快になることもありますのよ? とお伝えした方がよろしいのかしら? ジェネレーションギャップかもしれませんし、お父様の年代の方達だと大ウケするとか?

「そうか……そうだよな。エリック殿下は何を考えているのだろうか」

 ぼそっと呟くような声で言った。
 
「お父様、申し訳ございませんがもう少し声量を上げてくださると助かります」

「すまない……本題に入るよ。はぁっ。そのエリック殿下からリュシエンヌと婚約したい。と手紙を貰ったんだ」






 

「……………………え? 婚約ですか? ……誰と誰がですか?」
 

「そうだよな……そう思うよな。どうする?」







「お断りの方向でお願いします」

 ……え? エリック殿下と婚約? 私と? なぜ?

「……だよな」

「意味がわかりませんわ。殿下はもの好きなんですか?」

「リュシエンヌは我が娘ながら、優秀で美しくて勉強熱心で家族思い。惚れられる要素はたくさんあるからもの好きとは言わないけれど、なぜエリック殿下が……」

 はぁっと力のないため息を吐く。

「お父様。ご心配とか、ご迷惑とかたくさん掛けてしまって申し訳ございません。もし私がいる事で何か不都合がございましたら、領地に引っ込みますわ。みんなの邪魔になりたくはありませんもの」

「こういう時は甘えておけば良いんだ。任せときなさい。不都合なんて全くない、一度殿下と話をさせてもらうことになったから、どう言った経緯でリュシエンヌと婚約したいのか説明をしてもらうよ」


 エリック殿下謎ですわ。