「例の鉱山はうちのものになるな」

「え? あの掘っても掘っても何も出てこない、あの鉱山ですか?」

「そうだ。婚約をする際に交わした契約書があってな、あちらに非がある場合は鉱山はうちのものだ。あちらは慰謝料を払えるほど余裕はないはずだ。あの家には三人の娘がいるし、今後三人の娘を婚約させるとなると金がかかるだろうからね」

「掘っても何も出ない鉱山なんて持っていても仕方がないのではないですか? うちもかなりの金額を出資していると言っておられましたわよね?」

 共同とはいえあちらに主導権があり、それに従っているのですわよね? うちの人達から不満の声が聞こえてきていましたもの。


「鉱山はうちのものになるから、これからは私達のやり方で進めるだけだよ。忙しくなりそうだなぁ。その前に……婚約破棄となってしまったようだが、落ち込んだりしていないかい? リュシーのどこに問題があったというのだろうか。何か理由は聞いている?」


「えぇ。大きくいうと性格の不一致という事ですが、アルバート様は成績が悪くて美しくなく、人気がなく爵位は高いか低いかの女性が好みらしいのです」

 アルバート様の好み? なんでしょう。細かすぎて伝わりませんわよねぇ。難しいですわ。爵位についてはうちは伯爵家。中途半端なのでしょうか?

「……ん? どういう事だろうか? リュシーとは正反対の令嬢が好みならそれは仕方がなかったのかも? しれない」


 私が首を傾げながら話をしていたからお父様まで不思議そうな顔をしていますわね。あ、そうですわ。もう一点。

「お父様はリーディアさんというアルバート様の家のメイドの事は覚えておられますか?」


「もちろん。伯爵から謝罪を受けたからね。リュシー付きのメイドに怪我をさせたり、リュシーのドレスを汚したりとんでもないメイドだ。あのようなメイドがもしうちにいたとしよう。来客が来たら奥に下がるようにいうものなのだがな。遠い親戚で、礼儀を学びに来ていると言っていたが、伯爵家では何を学んでいるのだろうね」

 親戚だからクビにしないのだろうが他家だとクビレベルの粗相だね。とお父様が不思議そうに言った。

「リーディアさんに厳しくあたった。と咎められましたわ。正直言いますとリーディアさんには何を言っても無駄なような気がしますわ」

「アルバート殿はそんなに愚かな男だったのか……それにしても何故王宮でこんな話になったんだい?」


「あら、大変ですわ。お父様にお伝えしておりませんでしたわ。立会人が第二王子殿下でしたのよ」
 
「は? なぜ、そこで殿下が出てくるんだ」
 

「いくらアルバート様の友人だとしても不思議ですわよねぇ」