「はっはっは……モルヴァン嬢は珍しい令嬢じゃの。古代語にも興味があるんじゃな」

 令嬢が古代語に興味があるなんて確かに珍しい事で、授業で行う内容でもないですもの。

「お恥ずかしいです」

「それならわしも恥ずかしいという事になるぞ?」

「まぁ! 失礼を申してしまいました……」

 ……ど、どうしたら良いのかしらっ! 陛下になんて事を!

「ははっ、気にするでない。わしがいると落ち着かんだろうから、そろそろ戻る事にする。君はゆっくりしていきなさい。君のような勉強熱心な若者を見るのがわしは好きでたまに忍んでくるんじゃ。内緒だぞ」

「まぁ。お忍びですのね? 陛下の周りの方は今ごろひやひやとしているのではないですか?」

 ……息抜きをしたくなる気持ちもわかりますが、その、周りの方はいい迷わ、いいえ。やめておきましょう。

「君のいう通りでよく怒られるんだが、執務室にずっといても肩が凝る……たまには大好きな書物に囲まれたいと思っても良かろう? それに既にバレておる」

 陛下が指をさす方向には陛下の側近? と思われる方がこちらを見ていました。

「……お顔が怖いですね」

「目を通さなければいけない書類が残っておるからな……仕方がない。戻るとするか」

 歩き出す陛下にお礼を言う。

「陛下、お話ができて光栄でした。本日はこちらの本を読みたいと思います。ありがとうございました」

「わしも楽しかったぞ、それではな」

 陛下の姿が見えなくなるまで頭を下げていました。王宮の図書館には陛下もお見えになるのですね……

 セキュリティが万全なのがよーく理解出来ましたわ。私の侍女も護衛も中に入る事が出来ませんもの。それだけ厳重と言う事です。陛下とお話し出来たことに感動していたら、エリック殿下との約束の時間が迫っていました!