「どれが分かりやすいのかしら……?」

 週末になり、王宮図書館に来たのは良いのですが、古代語の勉強にはどの本が良いのか悩んでいました。司書様に聞きに行こうと思った時でした。

「おや、君は……モルヴァン嬢じゃったな」

「……陛下!」

 すっとカーテシーをする。

「これ、わしはいまプライベートなんじゃ。仰々しく挨拶する必要はないぞ」

「いえ、でも」

 ……どうしましょう! 頭を上げられませんわ。

「頭をあげてくれ、同じ本好きとして同士ではないか。それより何か言うておったが何かを探しているのではないか?」

 陛下は本が好きで、学園も王立図書館も蔵書が多く、教会での教えもあり国民の識字率が高い。


「……恐れながら、古代語を勉強しようと思いまして、初心者でもわかるような優しいものを探しておりました」

 ……声が震えているのが自分でも分かりますわ。凄く緊張していますの! 今までの人生の中で一番ですわ。

「古代語を学びたいのか?」

「はい」

「そうじゃな、それならば確か……おぉ、あった。これじゃこれじゃ」

 そう言って本を一冊渡してくれました。

「これは……?」

「わしも小さい頃から古代語を学んでおってまず最初に勧められたのがこの本でな、懐かしいのぅ。わしがこの本を勧めたのは君が三人目だ」

「……失礼します」

 本を受け取り、一ページ二ページと捲ってみる。

「わぁ。こう言う意味だったのですね! 法則が分かるとなんとなく分かってきました。とても分かりやすいですのね」

 嬉しくてつい笑顔で顔を上げると陛下も笑みを浮かべてくれていた。感情を出さないと思っていた陛下でしたがこのように朗らかに笑う方だった。