「殿下、ありがとうございました!」
「エリックだよ、リュシエンヌ」

 にこりと微笑む殿下。

「失礼致しました」
  

 本当にこの件に関しては殿下に感謝しかありませんわ。憧れの王立図書館ですもの。

「本当に嬉しそうだね。リュシエンヌには宝石やドレスなんかより歴史書をプレゼントした方が喜ばれたりしてね。ってリュシエンヌ聞いてる?」

 きょろきょろと図書館を見回すリュシエンヌ。


「あはは。聞いていないね。まぁいいや。楽しんでくれているようだし。今日は貸し出しは出来ないけれどシステムを紹介するよ」


 貸し出しが出来なくてもここで本を読ませてくださるだけでも良いのだけど……とはいえませんわね。貸し出しシステムは理解致しました。とにかく入館証を手に入れなくてはいけませんものね。学園が早く終わる日に入館証をいただきに参りましょう。

 図書館は二階建てになっていて、蔵書の多さに驚きましたし、紙とインクの香りが心を落ち着かせてくれました。

「お腹空かない?」

 時計を見ると正午を少し過ぎた時間帯でした。

「いえ、大丈夫ですわ……」

 正直図書館の香りで胸が一杯で、空腹を感じませんでした。

「せっかくだからランチをしてお茶を飲まないか? リュシエンヌには軽食を用意させるよ」

「え、そこまでお世話になるわけには、」
「まだバラ園も行ってないし、こんな機会中々ないんだから付き合ってよ」

「はい」


 ……入館証の借りがあるので、ここで失礼します。とは言えませんもの。


「来客が来た時に使われる部屋なんだけど、景色が良いから開け放しておくように言ってあったんだ」



「素敵です!」

 池があって鯉が泳いでいて、異国情緒あふれる庭園なんですね! 竹が伸びていて風が吹くとさらさらと葉が擦れる音も心地がいいでわすわ。

 殿下はうちの侍女やメイド護衛にも軽食を用意して下さっていました。至れり尽くせりで申し訳ないですわ。

 軽食はフレンチトーストで、しっとりしていてとても美味しく頂きました。

 学園の話やテストの話を面白おかしく話して下さって殿下は実は良い人なのかも? 少しだけですけどそう思いました。