「家族と一緒に過ごす時間も大事だな。寂しくなるが式まであと数ヶ月だから我慢するか。いつ頃戻る予定だ?」
 

「……レイ様! 見える所に跡を付けないで下さいと言ったのにお母様に見られてしまいましたのよ?! この跡が消えてから帰ってくるようにとの事です」

 親にレイ様と仲良くしていると思われて恥ずかしくて仕方ありませんでしたわ。婚前交渉をしたと言っているようなものですもの……
 

「……夫人は怒っていたか?」

「いいえ。ただお父様がショックを受けるから跡が消えてからと言われただけです。私が生まれたのはお母様の結婚した歳なんですの……だから、」

 お父様とお母様の結婚式の写真を思い出す。お母様のドレスはゆったりとしていて……

「……怒られない訳だな」

「恐らく……?」

 それから一週間後に家に帰る事になりました。新たに跡を付けられる事はありませんでした。

 家に帰っていつもの通り過ごしていると、胸がムカムカしたり眩暈がしたり、食事の量が減ったり。部屋で横になっているとお母様が言いました。


「月のものが最後に来たのはいつ?」

 ……何で? あれ、いつだったかしら?

「先月は来てませんわね……今月もまだです。先々月は……どうだったかしら?」

 
「月のものが来なくて、胸がムカムカして眩暈がして食事が取れないって……赤ちゃんが出来たのではなくて?」

「えっ! 赤ちゃんが……もしかしてレイ様の?」


「グレイソン様以外の子供が出来たのなら大問題でしょうが! ばか! 医師を手配して!」

「ハイ!」

 メイド達が慌ただしく部屋を出て行った。それからすぐに医師が駆けつけて来て、初期の段階でまだ確定ではないけれどその可能性が極めて高い。と診断をして帰って行きました。