失敗したわ。アデールの姿が見えなくてジョニーに探しに行かせた。

 まさか騎士団の練習場でこんな事が起きるなんて……子爵令嬢と人気No.3のシオン様。

 よくもこんな事を……でもレイ様は絶対に助けに来てくれる。



 意識が戻って様子を窺っていた。


『キスでもなんでも良いからしなきゃ、口実が作れないわよ』

『モルヴァン嬢の瞳に私だけを写して唇を塞ぎたい』

 No.3が私の頬に手を当ててきましたわ! 

『寝ている姿も美しい……寝姿を見ているだけで食事が進みそうだ』

 ぞ、ゾッとしますわ! キスをされなくて良かったけれど、寝姿を見られて、しかも私の顔を見て食事が進むだなんて目が覚めたら何をされるか分からない。怖い。


『ほら。モルヴァン嬢の持ってきてたバスケット』


 レイ様への差し入れは無事なようだわ。すごくすごく張り切って作ったのに、レイ様に食べてもらえなかったわ。レイ様が私の用意した食事を食べている姿を見ると幸せな気分になる。あぁ……台無しになっちゃった。No.3が子爵令嬢からバスケットを受け取って歓喜の声を上げた。


『こんな豪華な差し入れは見た事がない。キレイに並んだサンドイッチ、マフィン、フルーツ。くそ……隊長め。いつもこれを独り占めしていたのか』

『はぁっ……なんて美味いんだ。料理が上手なんだね、リュシエンヌ』

 急に私の名前を呼びぱくぱくとサンドイッチを食べ始めた。