「今すぐにリュシエンヌから離れろ!」

 リュシエンヌの胸に顔を埋めるシオンに怒鳴りつけるつもりが先に体が動いてしまい、シオンの首根っこを掴み剥ぎ取った。

「リュシエンヌ大丈夫か!」

 リュシエンヌの両手と足はロープで……信じられない光景に目を疑りたくなった。現実であって欲しくない。すぐさまロープを取ろうとするが手が震えて中々解けないでいた。

「レイ様……」

「リュシエンヌ……すまん少し目を瞑っていてくれ」
 
 懐に忍ばせている短剣を取り出しロープを切った。リュシエンヌの肌に傷がつかないようにそっと。ようやく手足が自由になったリュシエンヌはホッとしたようで、私に抱きついてきた。


「絶対にレイ様が助けに来てくれると思っていました……」
「遅くなって悪かった。心細かったよな……よく頑張った」

 私に出来ることは震えているリュシエンヌを抱きしめることだけだった。なんて無力なんだろうか。


「リュシエンヌちゃんが無事でよかった……何か変なこと、」
「レオン、それ以上言うと(殺す)」


 変なこと? リュシエンヌの心の傷を抉るな! レオンを思い切り睨みつける。


「……グレイ、リュシエンヌちゃんが潰れるぞ」

「は、すまん。苦しかったか……」

 思ったより力が入ってしまったか……華奢なリュシエンヌが潰れるところだった(決してリュシエンヌは華奢ではなく女性らしい体つきでグレイから見たら小さくて華奢に思えるだけ)

「いいえ。レイ様」

 そう言ってからまた抱きつかれた。リュシエンヌの背中を優しくさする。リュシエンヌの温もりを感じる事が出来て安心した。


「さて、どうするかね……」

 レオンが珍しく恐ろしい口調と顔でシオンとソレル子爵令嬢を見た。普段の優しい顔はそこにはない。