「ん、んんっ……」

 と声を上げたので私はさっと隠れた。


「リュシエンヌ目覚めましたか?」

 シモンが声をかけた。

「……ここは? 確かわたくしは練習場で……」

 息がきれそうになっているモルヴァン嬢。意識がなかったのだから仕方がないわよね。そういう薬だもの。

「あぁ、体調が良くないのですね。無理はしない方が良いですね」

 いいからとっとと手を出せ! ヘタレ!!


「私がリュシエンヌの看病をしますから安心して下さい」

 モルヴァン嬢の手をぎゅっと握り締めているシオン。

「……やめてください、ここはどこですか、私のメイドと護衛をどこにやったのですか」

「リュシエンヌのメイド達は安全な場所で眠っている。少し大人しくしてもらう必要があったから、もうすぐ解放しますよ」

「手を離してください。わたくしはグレイソン様の婚約者ですわよ? もしこんな事が、」
「ですからリュシエンヌを私のものにしてしまいます。隊長より私の方が年齢的に合うでしょうし大事にしますよ」

 そっとシオンはモルヴァン嬢の手にキスを落とした。両手を縛られているから抵抗が出来ないみたい。やめて下さい。と口だけは抵抗出来るのだけど、それも時間の問題。騎士の力に適うはずがないものね。

「リュシエンヌ……」

 シオンが椅子に座らされているモルヴァン嬢の前に膝をつき、モルヴァン嬢の胸に顔を埋めた……今ね! 部屋をこっそりと抜け出し廊下へ出た。すると隊長とレオン様が……


「……大変ですのよ、こちらの部屋で、」というなり隊長とレオン様が凄い勢いで部屋に入る。自分の婚約者が不貞をしている姿を見てあの女に幻滅すれば良いわ!