憎きモルヴァン嬢に声を掛ける。生意気なメイドの話をしたら油断したのよね。このバスケットが邪魔でしょうがないけど、残しておくわけにはいかないから持っていく事にした。公開練習中の廊下は誰も歩いていないから、見られることはなかった。私達は本当にツイているわ!


『シオン様は、このおん、モルヴァン嬢のどこがいいわけ?』

 シオン相手に取り繕っても仕方がないから、ついこんな態度になってしまう。

『隊長が羨ましい。強くて、公爵家の出で、王族の血も流れている。結婚しなくても地位があるからこの先も安泰だ。隊長に勝てることといえば女性にモテる事だと思っていた。私が微笑めば大体の女性は靡いてくれる。騎士は女性の憧れだ』

 ナルシストなのね……

『なのに……隊長にこんなキレイな婚約者が出来て、優しくて……ただ狡いと思っていたんだ。だが隊長といるモルヴァン嬢を見ていたらどんどん惹かれていった。そんな姿を見て欲しいと思った。なんで隊長は全てを手に入れることができるのか……彼女を奪えば隊長に勝てるような気がしたんだ』

 面倒くさっ!

『そうなのね……気持ちはよーく分かるわ。女の子ってね、優しくしてくれる男性が大好きなのよ? だから優しくしてあげて。ね?』