メイドのアデールがバスケットを持ってくれて、練習場まで歩いていました。今日の護衛はダニエルではなくジョニーという名の新人の護衛です。

 今日もたくさんの人が公開練習を楽しみにしているようでした。あの子爵令嬢に見つからないように最後列のベンチに座りました。

 あ、そうだわ! バスケットに入れようと思っていたのに別の袋に入れた紅茶があったんだった! セシリーから美味しいと勧められて購入したものでしたわ。


「ごめんなさい、馬車に忘れ物をしちゃったから取りに行ってくるわ。ジョニー一緒に来てくれる? アデールはバスケットの見張りをお願いね」

 アデールが取ってくる。と言ったのですが、忘れたのは私ですから自分で行くわ。と言いました。ジョニーも畏まりました。と言いついて来てくれました。


 ジョニーは騎士団の練習場に初めて来たようで、熱気が凄いですね。と興味深そうに見ていました。廊下を歩いて馬車に近づいた時でした。



「モルヴァン嬢、こんにちは」

「ご機嫌よう。今から練習ですか?」

 騎士団人気No.3の騎士様でした。よくお会いしますわね。


「はい。モルヴァン嬢はどちらへ?」

「馬車に忘れものをしてしまいましたの。練習頑張ってくださいませね。それでは失礼しますわ」

「モルヴァン嬢も私を応援してくれますか?」
 
「? えぇ、勿論ですわ」

 私の応援なんてなくとも人気No.3ですのに……まだ声援が足りないのかしら? 欲しがりさんなのでしょうか? 

 騎士様とお別れして紅茶を無事に取り練習場に戻りました。