「それと……私のレオン様に色目を使うのはやめてね。レオン様は優しくて、今は隊長の婚約者だからあなたと仕方がなく話をしているだけなんだから」

 悲しそうな顔で私を見てくる。何故だか不思議に思いましたの。だってこの方言っている事は辛辣なのに笑顔って……そう思い周りを見ました。令嬢達が遠巻きに私達の姿を見ていました。睨む私と悲しそうな顔の令嬢。周りからどう見えているか……

 そういう事ですのね……分かりましたわ。私は笑顔を令嬢に向ける。


「今だけではなくグレイソン様はわたくしの大事な方ですの。お分かりいただけないのなら仕方がありません。お構いなく」

 すっと礼をして令嬢の前から立ち去った。なんて失礼な令嬢なんでしょうか! 同じ空気を吸いたくありませんわね! レイ様のことを悪く言うなんて。

 控えていたメイドのアデールが何かあったのかと聞いて来ましたが、答えたくありませんでしたわ。
 

「もう少し落ち着いてから相談に乗ってね。少し頭を冷やしたいの」

「分かりました。お嬢様の様子がおかしかったので心配しております」

 アデールに心配かけてしまっているのね。ごめんなさい。心の中で謝りました。練習を見学している途中で声を掛けられたのでレイ様を見失ってしまいましたわ。
 アデールに聞くと、騎士団員の方に声を掛けられて出て行ってしまったようですわ。休憩までに戻って来ませんでしたので仕方なく図書館へ向かおうとしていたら、副隊長(レオン)様に声を掛けられました。