「そこの貴方、少しよろしいかしら?」

 本日も騎士団の練習を見に来ていました。応援隊の皆様のようにレイ様の瞳の色のグレーの扇子も用意してしまいました!


 声を掛けられたこの令嬢は練習場で良く見る令嬢で子爵家の令嬢のようですわ。応援隊を取り仕切るボスといった立ち位置なのだそうです。

「まぁ、そうでしたの。わたくし存じ上げませんでご挨拶が遅れてしまいました。リュシエンヌ・モルヴァンと申します」

「知ってますわ! あの隊長と婚約をしたんですって?」

 あまり良い言い方ではありませんわね……

「はい。そうですわ」

「あなた婚約破棄をされて、男漁りの末あの隊長と婚約をせざるを得なかった可哀想な令嬢なんですって? そうじゃないとあんな恐ろしい人と婚約しようなどと思わないわよね……残念な令嬢だわ」

 何この方? 失礼にも程がありますわ! でも怒りに任せて騒ぎを起こしてはなりませんわね。

「隊長と婚約をしているのに他の隊員にも差し入と言って近づき、色目を使っているのでしょう? そういう行為は私達応援隊の輪を乱す行為なの! 覚えておきなさいね」


「……わかりました。騎士様達への差し入れは控えますわ。それとわたくしの事はどのように思ってくださっても結構ですが、グレイソン様の事を悪くいうのはやめていただきたいですわ」

「ふふっ。分かっているのよ? 隊長を踏み台にして見め美しい隊員に乗り移ろうとしているのでしょう? 婚約破棄は一度すると二度でも三度でも同じですものね」

 何この令嬢は! そう思い令嬢を思いっきり睨む。