~グレイソン視点~
『隊長ではないですか』
『シオンか』
このタイミングでわざとらしく話しかけて来たのは気のせいだよな?
『リュシエンヌちゃん、今日も綺麗だね』
レオンがシオンといるなんて珍しいな。リュシエンヌが私から離れてレオンに挨拶をする。良い所だったのに邪魔が入った。
『副隊長様、御機嫌よう。騎士様も先ほどはありがとうございました』
レオンはリュシエンヌに名前で呼んで欲しい。と言っていたがリュシエンヌはレオンのことを副隊長様と呼ぶ。シオンの事は騎士様か……
『リュシエンヌから聞いた。私が離れていた間にシオンが相手をしてくれたそうだな』
リュシエンヌの肩を抱いた。ここは仕事場ではないからそれくらい良いだろう。リュシエンヌも自ら私に近寄った。
『いえ、大したことはしておりません。少しお話をさせてもらっただけです』
にこりと笑う顔は令嬢が好みそうな顔つきだ。レオンはそんな私達を見てリュシエンヌをダンスに誘おうとしている。
『リュシエンヌちゃん、良かったら私とダンスを、』
『え、ずるいですよ! 副隊長、モルヴァン嬢、私と、』
レオンは冗談めかして誘おうとしているがシオンはなぜリュシエンヌと? そんなに関わりがないだろう?
『しなくて良いぞ。お前達と踊りたい令嬢が待ちかねている。それに私たちはそろそろ失礼する』
『え、もう帰るのか? リュシエンヌちゃんとまだダンスしてないのに!』
残念そうにレオンは言ったがリュシエンヌと踊らなくとも、こいつに誘われたい令嬢がたくさんいるはずだ。こいつは不動の騎士団人気No.1だからな。放っておいても声をかけられる。
『……しなくても良いと言った。リュシエンヌ帰るぞ』
『あ、はい。それではお先に失礼します』
長居は無用だ。リュシエンヌが私の腕を組んで来た。