名前を覚えていないなんて失礼極まりないですもの。

「名前を?」
「はい。お聞きしたとは思うのですが、わたくしレイ様と婚約したことに浮かれていて、副隊長様のお名前くらいしか覚えていませんの。練習中はレイ様に夢中で周りの声も聞こえませんし……他の方に興味はありませんもの。お話しされた方は人気No.3の騎士様ですわ。茶色の髪の、」


「シオンか……」
「確かそんなお名前でしたわ! スッキリしましたわ」

 そうですわ! 人気No.3のシオン様ね!

「……離れた私が悪いのだが、何かあっては困る。これからは遠慮せずに私を呼びに来て欲しい」

「レイ様が他所行きのお顔でお話をされている姿を見ているのもわたくし好きですわ」

「そんな可愛い事を言ってもダメだ。離れた私が悪いのだが、リュシエンヌが誰かといると思うと腹立たしい」

「ふふっ大丈夫ですわよ? わたくしはレイ様一筋ですから」

 肩に腕を回されてギュッとレイ様の胸元に寄せられましたわ! 私はこの厚い胸板が大好きですわ。

「くそ、今日も可愛いな」
「レイ様大好きですわ」

「あまりそう言うことは、こんな所で言わないでくれ……」
「だーい好きです」

「……酔っているのか?」
「うーん、どうでしょう」

 レイ様に抱きつきました。酔っているのかもしれませんわね? そうすると優しく背中に手を当てられました。