「すまない、捕まってしまった……」

 レイ様が慌てて戻って来ました。十分程でしたのでよくある事ですわ。急いで戻って来てくださりましたもの。

「ふふっ。大丈夫ですわ。でもお待ちしてましたのよ?」

 レイ様にもお断り出来ない方がいらっしゃるんだわ。新鮮ですわね。それからレイ様のお知り合いの方に挨拶をしてまわりました。少しだけ目がとろんとして来ましたわ。

「どうした? 眠いのか?」

「もう、レイ様ったら子供扱いですか……ちょっとだけですわよ、もしかしたら慣れないお酒が、」

「ん? 酒を飲んだのか? いつ?」

「二口だけですわ」

「……私が離れた隙に何があった?」

「レイ様の隊の方とお会いして少しお話をしましたわ。その時にカクテルを渡されて口にしました。でも二口だけです」

「……そうか。目を離すべきではなかったな。ところでどこのどいつがリュシエンヌに酒を飲ませたんだ!」

 どこのどいつ……お名前を存じ上げませんのよね。

「えぇっと……」

 レイ様の隊の方なのに名前を知らないなんて婚約者失格ですわ……

「なぜ言わないんだ……私がいない間に一体何が……もしかしてそいつの方が、」

 何か変な方へ話がいきそうですわ!

「違いますの! レイ様に変な誤解を与えたくはないのですが……私お名前を存じ上げませんの。レイ様の隊の方なのに失礼すぎて言えませんでしたの。申し訳ありません」