婚約者になってから初めて公でのダンスでした(婚約式以外)一曲なんて言わずにもう一曲……だって二曲連続踊って良いのは婚約者か夫婦だけなんですわよ? 一曲目が終わりそうな時にレイ様をじっと見つめる。


「……もう一曲踊ろうか」

 伝わりました!

「はい、嬉しいですわ」


 レイ様のガッチリした腕に閉じ込められる感覚が夢心地ですわ。あっという間に二曲踊ってしまいました。


「リュシエンヌ何かドリンクを貰ってこようか」

「はい、お願いします」


 まだまだ踊りたい気分ではあるのですが、ご挨拶をしなくてはいけない方がいるそうですから一旦落ち着かないといけませんわね。こうやって会場を見ているとガッチリした体型の方が見られます。ブラン卿の部下の方が多いのかも知れませんわね。あら、レイ様の隊の方の姿も見られますわ。


「モルヴァン嬢ではありませんか?」

 声をかけられたのはレイ様の隊の人気No.3の……お名前は存じ上げませんでした(忘れた)顔を合わせるたびに挨拶はしていたのですが、今更お聞き出来ませんものね。


「まぁ。御機嫌よう。こういった場所でお会いするのは初めてですわね」

「ドレスアップされたモルヴァン嬢は輝く様に美しいです。今宵はとても良い夜です」

「まぁ、お上手ですのね」

 人気No.3ともなると、スラスラとお世辞が出てくるのですね。勉強になりますわ。すっとウェイターから飲み物を二つ取って渡してくれました。

「どうぞ」

「まぁ、ありがとう存じます」


 レイ様が持ってきたものならいざ知らず、あまり口にしたくありませんわね。

「令嬢に人気の甘いカクテルです」

 口につけるくらいにしておきましょう。と思っていたら後ろから人がトンッとぶつかってきました。

「申し訳ない、大丈夫ですか、お嬢さん」

 こくん。とカクテルを口にしてしまいました。あら、美味しいですわ。