「面倒ですわ! お父様にお任せしますわよ」

 
「……何も出ないことはないんだよ。あそこは金が採れる。コリンズ伯爵家の連れてきた学者と私が連れてきた学者との意見が食い違って揉めていたんだが、うちのものになるのだから、掘り方を変えていこうと思う。採掘人も増やさなくてはいけないから、村人に声をかけようと思う。学者が言うにはいい粘土質の地層があるようで、焼物に向いているようだし東洋の技術を取り入れて窯元を作り村を活性化させたい。それは子育てが終わった女性達に手伝って貰いたいと思っている。女性ならではの焼き物が出来ると流行を作れるんじゃないかな?」

 流行りは女性が広めるものですし、女性が作るものは繊細で人気が出そうですわね。
 
「まぁ。そこまで考えていらっしゃるのね。さすがお父様ですわ! 女性も稼いで家計を助けるなんて素晴らしいですわ!」
 
「それがうまくいったら、孤児達を呼んで手に職をつけさせる事ができるだろう? 地下を掘れば温泉が湧くそうだし、疲れた身体を休ませてもらう事も出来る。まぁ、これには多額の金銭が飛んでいく事になるだろうが、頑張るってくれる皆んなに感謝の意を込めて出す事にしよう」

 温泉まで! 身体を休める事ができるのですね。温泉……入ってみたいですわ。話には聞いた事がありますが疲労回復にとてもいいとか、美肌効果があるとか。湯治といって身体を回復させるための温泉もあるのですわよね? 温泉によって効果が違うのでしょう?! あら。話が逸れましたわ。
 

「お父様、そこまで考えていたのならもしかして婚約破棄も想定内でしたの?」

「いや。学者から提出された書類は頭に入っているから、私ならこうするのになぁ。と考えていたことを口にしただけだよ。共同でなくなるのだから全てが私の責任になる。金はいずれ出るだろうが、それまでの繋ぎを考えておかないと文句が溜まるだろう? やる気も出ないしね」

 学者同士の意地の張り合い……くだらないようで大問題なんでしょうね。意地の張り合いといえば聞こえがいいかもしれませんが、見解が相違しているのでしょう? 自分は間違っていない! 今迄の研究結果がものを言いますものね。
 


「鉱山の件はお父様にお任せするとして、リュシーは昨日殿下から手紙をいただいたのでしょう? なんて書いてあったの?」

 そうでしたわ。お話をしないといけませんわ! お母様は気になっていたようでした。

「先日の件を心配されているようで、お茶会に招待いただきましたの。でも今まで殿下とはお話をした事もありませんから、気にかけてくださるのは有り難いのですがお断りをしようと思っていますの」

 どうして殿下からお声が掛かったか分かりませんもの。学年も違いますしお姿を拝見することも少ないのですから。

「……失礼のないようにしなさいね。そうね。お心遣いは有り難いのですが傷心の身ですのでとか、なんとか言い訳を考えないといけませんね」

 お母様も殿下とお会いするのは避けた方が良いといった感じですわね?