「姉様ってさ、不思議だよね……エリック殿下は王子だし顔もいい。初対面の時は悪い印象じゃなかったから僕はエリック殿下と姉様がくっ付くと思っていたんだよね……元婚約者は無いとして」

「初対面? なんでハリスが知ってるのよ!」


「数年前に姉様と出かけた時に雨が降って、雨宿りしていた時に先客がいたんだ。黒い髪の毛をしていたけれど、あの時の先客はエリック殿下だったからね。姉様は気がついてないのかも」

「へぇ。雨の日に出会うなんてロマンチックね。殿下は姉様に婚約を申し込むまでだったのにどこで間違えたんだろうね? お義兄様は上手くいったのに」


「姉様に変化球は通用しないんだよ。婚約破棄をされて嫌な思いもしただろう? 平然と振る舞っていても婚約破棄をされた。という事で後ろめたい気持ちがあるんだと思うよ。気にしなくてもいい。って周りが言うたびに申し訳なさそうな顔してたし」

「だから大人のお義兄様に惹かれちゃったの? お義兄様は怖そうに見えるけれど、お姉様といると優しそうだし、お姉様も可愛らしく見えるよねっ。大人の包容力っていうのかなぁ?」

 リュシエンヌの作ったクッキーをさくさくと食べながらハリス&パティは話をしていた。

「……それは義兄様だからじゃ無い? 本の趣味も合うみたいだしね。若いのに古代語が共通の趣味なんて……義兄様は古代語に造詣が深いようだし、なんたって騎士様だろ? 姉様の愛読書には騎士様の本が多いんだ。令嬢憧れの職業は騎士だろ? 姉様は口に出さないだけで無意識に憧れているんだよ」

 今度義兄様にこっそり教えてあげよう。喜びそうだ。


「騎士様ってキラキラしたイメージがあるけれど、お義兄様は無骨な感じがするわね、でも浮気の心配はなさそう……? お姉様しか見てない。って雰囲気だったよね! それに隊長さんで公爵家の人って凄くない? うちと釣り合う? 苦労しないかな……」


「公爵家は長男の方が継ぐからそこは良いとして……たまたま好きになった相手が義兄様だったんだろ。公爵家だって王族の血は流れている……って凄いな姉様は!」

「しっかりしているように見えてちょっと抜けていて、見た目は綺麗なのに中身は純粋で可愛いんだよ? お姉様を知れば知るほどお義兄様は夢中になるわね!」

「もうなってるって……婚約に向けての準備も早いよきっと?」