「恋人同士という間柄は婚約してしまうと経験できないのよ? お互いが思い合ってないと恋人にはなれないんだから、経験しておくといいわね。わたくしにそんな経験はないけれど楽しそうじゃない?」

 お母様も背中を押してくださった。

「閣下と恋人?」

「……ダメか? モルヴァン嬢。あと一ヶ月なんだが」

「いいえ。素敵な響きですわね。閣下よろしくお願い致しますわ」

 ……あっさり両親から許可を得られましたわ。それから今後のことを話して、来週閣下の家にご挨拶へ行く事になりましたの。緊張しますわ……少し二人でお話をする事になりました。

 
「まずは恋人らしくプレゼントをしたいと思っているんだが……」

「プレゼントですか?」

 ……お断りするのは失礼よね? 好意で言ってくださるのだし。

「指輪を買いたいと思うんだが……」

「婚約指輪……ですか?」

「受け取ってくれるか?」

「はい。喜んで」


 閣下とご実家に挨拶へ行った後に、王都へ行く約束をしました。閣下が利用している宝石店があるそうで、予約をしてくださるという事です。
 でも早くないかしら? と思っていたら、オーダーメイドになるから今すぐに作らないと、婚約時に間に合わないとか? そう思うとこの一ヶ月間は大事な期間だったのですわね。


 恋人……って何をすればいいのかしら? 閣下が喜んでくださることをしたいわ。

「また練習を見に行ってもよろしいですか?」

「勿論、来てくれると嬉しい」

「差し入れをお持ちしますわね。何がいいですか?」

 堂々と応援に行って、差し入れを持って行けるなんて幸せ。

「……そうだな。昼食を持ってきてくれると嬉しい。二人分頼んでいいか?」

「二人分ですか? どなたかの分ですの? 好き嫌いはございますか?」

 ……わざわざ二人分とおっしゃるのだから一人で食べるわけではありませんわよね?

「君の分だよ。一緒にランチタイムを過ごしたい」
 
「……まぁ! 嬉しいですわ」

「隊を任されていて忙しいが出来るだけ一緒に過ごせればと思っている」