「あなた、閣下はお帰りになったの?」

 閣下を見送りリュシエンヌの様子を見に行こうと思ったところで妻に会う。

「あぁ、今ほど帰られたよ。リュシーの様子はどうだった?」

 妻はリュシエンヌが心配で様子を見に行っていた。

「顔が真っ赤に染まっていて熱があるのかと思ったら、熱はなかったわ……考え事をしていたら眠れなかったみたいで、夜になるとつい考え事をしてしまうんですって。湯浴みをして眠るように言っておいたわ。念の為夕食は軽食を部屋に届けましょう」

 お茶の準備を頼み妻と執務室へ行った。閣下との話の内容話を妻に伝える。

「まぁ。リュシーと閣下ですか! リュシーが良いのなら進めたい話ですけど……リュシーは自分の気持ちに気がついていないのかしら? 騎士団へ行く時の楽しそうな顔久しぶりに見ましたのに」


「リュシーは恋愛に疎いんだろ。閣下も奥手のようだし背中を押しといた。明日あたり見舞いに来るそうだから、進展があるかも」

 なかったら、リュシエンヌは渡さない。結婚なんてしなくとも家にいれば良い。あの閣下ならリュシエンヌを任せても大丈夫そうなのに、強面の上に奥手とは……浮気の心配もなさそうだ(多分)面と向かって話をしたのは初めてだったが、真面目な男だと思った。



「まぁ。お見舞いに? メイド達に伝えておかなくちゃ。あなたはリュシーの相手に閣下が相応しいと思っていらっしゃるのね?」

「相応しいって……身分はあちらの方が上だし、地位もある方なんだよ? リュシーが良いのなら……親としては……」


 閣下はいつも堂々としている印象が強いだけに、今日話をしてあると背中を丸めて小さくなっていた。この人ならリュシエンヌを任せても大丈夫だろう。何があっても守ってくださる。

 ……陛下のお墨付きもあるし。