「……恥ずかしながら、年甲斐もなく……ですが、この気持ちを知られて令嬢が離れていくというのが怖いのです。令嬢と本を読む時間は至福の時間です……一緒にいて心が安らぐ相手はこの先も現れないだろう。そう思っています」

「……そう思うのならその気持ちを娘に伝えてやって下さい。閣下は娘を悪意から守っていただける。私はそう思っています」

「悪意……ですか?」

「娘が婚約破棄された令嬢だと、婚約破棄をされた場合理由はどうあれ女性側が非難を浴びるものです。娘が嫌がる相手と結婚させようという気持ちは一切ありませんが閣下なら……きっと」

「……伯爵は良いのですか? 歳が離れていますし、」
「娘が貴方様を良いというのなら構いません。それなら我が家は伯爵家ですが釣り合いは取れませんか?」

「まさかっ!」

「閣下のことは陛下から聞かされていまして……古代語に造詣が深いと。私も若い頃は古代語が好きで趣味で読み漁りましたよ……娘も古代語が好きなのか。と嬉しく思いました。そんな娘が貴方様に惹かれる理由もよく分かるのですが、貴方様はその恵まれた体型とは比例して、奥手のようで……後は貴方様にお任せします。フラれるなり上手く行くなりどうぞお好きになさってください」


 やれやれ。と言った感じで私を見てきた。急に恥ずかしくなり顔が赤くなる。


「私が娘の気持ちを閣下に伝えたのは内緒にしておいてください。娘も自分の気持ちがよく分かっていないんだと思いますよ? ですから悩んでいるんでしょうな……そんな風に娘に思われているなんて閣下は幸せ者ですね」

 ……それが本当なら幸せ者で間違いない。


「ありがとうございます」


 明日、見舞いに来る許可を得て伯爵との話は終わった。



 屋敷に帰り精神統一をする。明日こそ負けられない(自分との)戦いがある! この気持ちを伝えよう。