「確かに私のようなものと令嬢が噂になると困りますね。令嬢の将来を考えると関わらないのが一番だと……思います。私が令嬢をどう思っているかという質問ですが……まだよく分からないのです。可愛らしい令嬢で勤勉でよく気がついて……私の風貌を見ても臆する事なく接してくれる稀有な存在です。話をしていて年甲斐もなく楽しかったり……分からないのです」


「……………………」




「伯爵、どうかされましたか?」

 急に無言になったので非常に気まずい。


「……閣下は、その、失礼ながら、恐らく、ですが……娘のことを好いていると思うのですが、違いますか?」

 ……なっ! 急に何を!

「恐らくですが……娘も貴方様の事を少なからず悪く思っていないようです。娘がわざわざ騎士団へ行き差し入れをする。なんて事は私には考えられなくて……閣下のような地位のある方に報われない恋をするのなら、閣下の方から突き放して欲しいと思っていました」

 ……モルヴァン嬢が私を?? 伯爵は何を言って……

「……いやいや。令嬢が私と? そんなの勿体無いだろう! 若くて器量もいい。私には勿体無い!」

「っそう思うのなら、もう娘には会わないでいただきたい! 閣下のおっしゃる通り娘には相応しい子息が現れるでしょうから」


 ……それは……困る。今のこの気持ちは、行き場のない気持ちなのではないのか? 伯爵はまっすぐ私の目を見ている。


「閣下、返事がありません。金輪際娘に会わないという約束をしてください」



 私に突き放せと──

 そんな事出来るはずがない。


 もう本当は──