~グレイソン視点~

 部屋の前まで送り届けた。流石に令嬢の部屋に入るわけにはいけない。


「閣下、どうぞこちらへ。主人がお礼を言いたいと申しております」

 執事が案内してくれた先は応接室で中には伯爵が待っていた。もちろん顔を見たことはあるが対面して話をするのは初めての事だった。

「この度は娘を送ってくださりありがとうございました。ご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます」

 迷惑などかかってはいないので訂正する。


「迷惑など掛かっておりませんし、たまたま通りかかったので送らせて貰いました。令嬢は睡眠不足で人混みに酔ったと言っていました」

 最終試験があり勉強が忙しかったとも言っていた。真面目に試験に取り組んでいたのだろう。


「珍しい事もあるものです。娘はこう言っちゃなんですが、よく寝て良く食べ健康そのものでしたので……閣下が偶然通りかかってくださったので助かりました。ありがとうございます」

「礼には及びませんよ」

「ところで閣下はうちの娘とどういった関係でしょうか? 図書館へ行っていた事は知っていますが、騎士団に見学へ行ったりと、今までの娘の生活とは違う事が多々ありまして……」

 娘を心配する親の顔をしている。やましい事は一切ない。

「以前令嬢に傘を貸したのが縁で知り合いました」

 それは知っているはずだ。

「そうですが……それだけでわざわざ騎士団へ行くとは思えません……婚姻前の娘が、その、貴方様のような方と噂になりますと娘の今後に関わります。閣下が娘をどう思っているのかは分かりませんが、娘のことを思うのなら、これ以上関わらないで欲しいのです」

 ……私のようなものと噂になると今後の結婚に左右すると言いたいんだよな。