「お嬢様、閣下と親しくなられましたね……思っていたよりもお優しいかたでしたね。その、見た目は、えっと……体格がよろしいので恐ろしい方かと思っていました」

 メイドのアデールに言われましたわ。


「親しいと言えるのかしら? ……差し入れの時にバスケットを渡してはダメね。閣下は律儀な方だからお返しをもらってしまったわ……」

 きっとそれだけ。優しい方ですもの。私に特別な感情などないでしょうし……ぴりっと胸が痛む? のはどうしてでしょうか。閣下が時折見せる笑顔が、素敵で……

 私も応援隊の方達のように閣下のことを応援出来れば良いのに……大きな声で閣下のお名前をお呼びする事が出来れば……って。

 迷惑がかかるわ。せめて扇子を作ってお名前を刺繍して……ってそんなことをしたら引かれてしまうわね……

 なんですの、この気持ちは! ダメね……閣下のことを考えていると眠れない日々が続いてしまいました。閣下のお声が耳に残って……