何気ない会話をしていたら司書が本を抱えてやってきた。机に置いて肩を並べてページを開く。モルヴァン嬢が首を傾けたので何事かと聞く。この文字が解読できませんわ……そうかまだ勉強中だったな。

 これは○□○と読むのだ。なぜそうなったかという理由を説明すると──

 『閣下の説明は分かりやすいですわ』

 頬を染め喜ぶモルヴァン嬢。気がつくと外から鐘の音が聞こえ昼を告げた。もう昼か……時間が経つのは早いな。


「モルヴァン嬢、昼はどうするんだ?」


「いつもはお昼から来るので考えていませんでした。本日は楽しかったですわ、とても勉強になりました。ありがとうございました」

 ……別れ辛い。


「モルヴァン嬢、時間は……まだいいのか?」

「え? えぇ、夕刻迄に帰らなくてはいけませんが」

「……それなら、ランチを一緒にどうだろう?」

「あ、えっと……よろしいのですか? 閣下は休日ですのに」


「もちろんだ。天気もいいから外でどうだろうか? 大したものは用意出来ないが任せてもらっても良いか? 苦手なものは?」

 ……結局は騎士団の食堂へ行くことになるのか。外にランチを誘う勇気は持ち合わせていない。


「ありませんわ」

「分かった。この前私がいたベンチで待っていてくれるか?」

「はい、お言葉に甘えて……」



 図書館を出てモルヴァン嬢がいつも連れているメイドと護衛に説明をしていた。騎士団の食堂へ行くと部下達が何事かと私を見てくるが華麗にスルーした。

 小さな声で女性二人と男二人分を……とシェフにオーダーした。
 ニヤニヤするシェフも華麗にスルーした。するとシェフは何も言わずに四人分を持たせてくれた。


 シチューパイ? 
 フルーツサラダ? 
 パウンドケーキ? 
 フルーツティー? 


 そんなもの普段は出さないくせに。どこから出てくるんだ?


 モルヴァン嬢、メイド、護衛騎士も喜んでいたからまぁ良い。シェフに礼を言っておくか。美味かったと。