「閣下はもしかして休日ですか? いつもの騎士様の制服ではありませんものね? ラフなお姿もお似合いですね」


「……世辞は不要だが、モルヴァン嬢も……今日の装いは軽やかで、似合っている」

 紺色のドレスに白のリボンがアクセントになっていた。落ち着いた服装を選んでいる様だった。パーティーの時のドレスも可愛かったがこのようなシンプルなドレスも清楚でよく似合う。

「まぁ。ありがとう存じます。お世辞でも嬉しいですわ」


(司書はこの二人の雰囲気にいい予感しかしないので、少しだけお節介をしたくなる)


「モルヴァン嬢も来られましたし、閣下例の本を一緒にご覧になってはいかがですか?! 関係者以外立ち入り禁止エリアの本ですが閣下がいるのであればご覧いただけますし、いつものお席でお待ちいただければ私がお持ちしますよ」


「まぁ。先日の本ですの?」

「はい! 閣下どうされますか?」

「モルヴァン嬢が読みたいのであれば……」
「はい、よろしければ是非」

 ソファに並んで腰掛けた……このソファ狭くないか? 近くにモルヴァン嬢を感じる。無言ではいけないがここは図書館、静かに会話を楽しもう。声のトーンを抑えて話をする。

「モルヴァン嬢、先日は差し入れをありがとう。隊員達も皆喜んでいた」

 ミートパイ……残念だったな。

「閣下も召し上がってくださいましたか?」

「アップルパイを頂いた。シナモンが効いていてうまかった」

 レオンも同じことを言っていたな……

「それは……入れ過ぎましたの。それでりんごを急遽増やして……すると量も増えてしまいましたの。パイを包むときに歪になってしまったり……」

「……本当に手作りだったんだな(もっと味わって食べるべきだった)」

 そう言えば貴族の令嬢の手作りという言葉を信用してはいけない。と隊員の誰かが言っていたな。手作り=シェフって笑いながら話しているのを聞いたことがある。

「ほぼシェフが作ったのですよ。わたくしは邪魔ばかりでしたわ。でも、クッキーは得意ですの! 何度も作っていますし、弟も妹も喜んでくれます」

「それは今度作ってくれるという事と捉えてしまうが……」

 口が勝手に!


「閣下は甘いものが得意ですか?」

「すごく甘いものは食べないが、普通に食べるな」

「それではまた差し入れにいきますね。クッキーでよろしければ」


 ……また来てくれるのか。でもなぜ私なんかに差し入れをしてくれるのだろうか。