~グレイソン視点~

 朝から図書館へ行く。休みなのにわざわざ王宮に向かうと言うのもなんだか……知り合いに会いたくないからコソコソと図書館まで行く。ついでに司書に渡された例の本も返却する予定だ。この本を知り合いに見られるわけにはいかない! 周りを警戒しながら図書館までの道のりを行く。決して怪しい人間ではない。

「閣下、朝から珍しいですね!」

 ……びっくりした。この司書も私を怖がらないんだよな。

「あぁ。たまにはのんびり本を読むのも悪くないと思ってな。この本の返却を頼む」

「どうでした? 勉強になったでしょう?」

 【騎士と令嬢の危ない関係】は見ていて辛くて鳥肌が立った。

「……まぁ、そうだな」

「でしょう! またオススメを用意しておきますね」

「…………」

「閣下、もしかして先日の本を読みにこられたのでは?」

 伯爵から譲ってもらった本か。

「あぁ、そうだ、閲覧可能か?」

「はい。陛下も大変喜んでおられましたよ」

「今度伯爵の家にお礼を届けることにするよ。伯爵家の蔵書も素晴らしいんだ」

 などと司書と話をしていたらモルヴァン嬢がタイミング良く現れたのだ。

「閣下ではないですか。司書様もご一緒でしたのね、ごきげんよう」

「モルヴァン嬢、おはよう」

 にこりと微笑むモルヴァン嬢。くそ、爽やかで眩しいな。