バスケットを返しに来た。と言う理由は成立するだろうか? するよな。借りたものは返さなくてはいけない。

「旦那様、お預かりしたバスケット綺麗にしておきましたよ」

 メイド長のハンナに綺麗にするように頼んでおいた。元々キレイだったけど、マナーとして当然の作業だ。ハンナには娘がいてモルヴァン嬢と歳が近いから女性の好みを聞いてみよう。

「あぁ、助かる。このまま返すわけにはいかない、何かお返しに良いものはないか? 若い令嬢だし何が好きなのかよく分からないんだ」

 するとハンナは即答した。
 
「女性はキラキラしたものが大好きですね」

 ……キラキラしたもの?

「宝石でいいのか? それなら宝石商を呼んでバスケットにいっぱい詰めて返せばいいのか?」

 ……宝石でいいのなら、
「……冗談は顔だけにしてください。バスケットにいっぱいの宝石だなんて重いだけです。あ、この重いは気持ちが重いと言う事ですよ……まぁ重さもしっかりありますが……」

 ……冗談だったのか。悪い冗談だな、本気にしてしまった!

「婚約者やお付き合いしている方ならいいと思いますけど、そういった関係ではありませんよね? それなら今流行りのチョコレートボンボンなんてどうですか? 終日大行列ですよ? チョコレートがキラキラと美しく並んでいる様はもう見ているだけで心が弾みますよ! 」

「悪くないな。気持ちが重くない程度に用意できるか? チョコレートショップは流石に……並べない」

 私のような男が並んでいると圧がかかるだろうし、目立つ。自分で選ばなくては行けないのだろうが、流石に無理だ。

「私が並んで買ってきましょう。その代わり私たちメイドの分も買っていただけますよね?」

「ハンナが並んでくれるのか? それは助かる。メイドの分か。それくらい喜んで出そう」

「大人気の紅茶店の限定フレーバーもお付けするといいかと? チョコレートのお供になりますし?」

「……メイド達の分もか、まぁ、良い買ってきてくれ」

 安くついたのか高ついたのか分からないが、チョコと紅茶なら重く取られないだろう。