「本日の閣下の装いは素敵ですね。いつもは凛々しいお姿ですが正装もびしっとしていてお似合いですね」

 ……正装姿もばっちり決まっていますし、雰囲気が変わって見えますもの。前髪が上がっているのでお顔がよく見えますわ。

「……モルヴァン嬢の装いも、その、華やかでグリーンが良く似合う……とても可愛い」

「か、可愛いですか?」

 ……可愛いなんて! 可愛いってパティのようにピンクのドレスが似合う子に使う言葉ですわよね。私が可愛いだなんて……


「……すまない。失言だったか? 悪気は全くないんだ……素直に可愛いと思ったんだが……もしかしてレディに可愛いは禁句なのか?」

 オロオロする閣下。いいえ……違いますよ。

「……ふふっ。久しぶりに可愛いだなんて言われて、嬉しいですわ。可愛いという褒め言葉は妹に取られてしまっていましたし、私も妹に可愛いとよく褒めますの」

 お姉さんになってからは可愛いというよりキレイと言われることが増えましたもの。ホッとする閣下の姿を見て申し訳なくなりました。

「良かった。可愛いという褒め言葉はダメなのかと思った……モルヴァン嬢はいつも可愛いが今日は特に磨きがかかってとても可愛い……」

「なっ、」

 ……なんていうことでしょう! 閣下は、閣下は天然の人たらしですわ!! 顔がみるみる赤くなって閣下から顔を背けました。


「どうした? 体調でも悪いのか」

「……いいえ。少し暑くなって、」

「夜風に当たるか?」

「その方がいいようですわ」

 すると手を差し出され躊躇しながらも手を取りました。今日はいつもと違って夜会ですから令嬢扱いしてくださるのですね。なんだか新鮮で嬉しいですわ。大きな手に支えられながら歩きました。