「まず、リュシエンヌは可愛げがなく私に寄り添おうという態度が見られない。優秀なのは認めるが可愛げが全くない。学園では身分問わずに声をかけ優しいなどと言われているが、リーディアに対する態度は酷いものだ! 人に対する態度がなっていない。私がリーディアと話しているのがそんなに気に食わないのか? そんな器の小さい女では今後ちょっとした事で嫉妬してしまうだろう。窮屈すぎる」

 嫉妬? 何のことでしょうか。皆ポカンとしている。

「貴族なんて愛人の一人や二人いて当然で、それを見て見ぬふりをするのが貴族の夫婦としてのカタチだ。現に父にだって情をかけているオンナはいるし、モルヴァン伯爵はモテるだろうし、一人や二人いてもおかしくはないだろう!」




 ……絶句。
 とはこのような時に使う言葉でしたのね。コリンズ伯爵様は青褪めたと思ったら顔が白く生気がなくなってきたような。ですわよね。こんな所でご自身の愛人問題を暴露されてしまったのですから……

 
「コホン。因みに私にはそのような女性は一人もいない。どれだけ調べてくれても結構だ」

 お母様の目をしっかりと見てお父様が答えた。義理の姉妹や兄弟がいなくてホッとしましたわ。って。いえ! お父様を疑ってはいませんでしたわよ? お父様は娘の私から見ても優しくて素敵なダンディですが、家族以外にはそんな顔お見せにならないですものね。

「話は逸れたが、この書類にサインを貰えますか? 私の分は既に記入済みです」

 婚約破棄の手続きに入りましたわ。お父様面倒になったのでしょうね……確かにアルバート様の態度にはうんざりですわ。恋なんてしていませんでしたが、百年の恋も冷めてしまいます。そんな感じ? ですわ。