アリンコと佐藤くん

 それから数日たったある日の放課後。
 このところ降り続いていた雪もすっかり溶けた。
 今日は久々にお日さまが顔を出してる。雲間からのぞく青空がキレイ。
 さいきんはずっとバスで通っていたけど、明日からはまた自転車で来ようかな?
 なんてことを考えながら、校門に向かって歩いていると。
 あっ。
 心臓がドキンと大きな音を立てた。
 A組の佐藤くん――「ショウくん」がいる。
 部活の途中なのか、トレーナーと青のジャージ姿。
 そして、すぐそばにいるのは同じくジャージを着た女の子。
 ショートボブがよく似合ってて、目がパッチリと大きく、手足がスラッと長い美人。
「二年のサッカー部のマネージャー。半年前からずっとつき合ってるんだって」
 芙美ちゃんの言葉がよみがえる。
 そっか、あのひとが……。
 彼女と話している佐藤くんの表情はとても楽しそう。
 浮かべているほほえみが、胸が苦しくなるほどりりしくて。
 その顔を見つめている彼女も、すごく幸せそうで。
 分かってた。
 はじめから、あたしと佐藤くんじゃとてもつり合わないってこと。
 だけど、実際に現実を目の当たりにすると、やっぱり心がついていかない。
 この先あたしにピッタリなひとなんてあらわれるのかな?
 そもそも、この世界にあたしのことを好きになってくれるひとなんているのかな?
 どんどんネガティヴな考えにおしつぶされそう……。
「アリちゃーん!」
 そのとき、チリンチリンと自転車のベルが鳴った。
 ふり向くと、後ろからC組の佐藤くんが自転車に乗ってこちらにやって来る。
「佐藤くん……!」
 どうしてここに?
「探したぜ。A組に行ったら、クラスのやつがアリちゃんもう帰ったって言うからよ」
 着ている黒いコートの胸元のボタンを外して、佐藤くんはふーっと息をはいた。
 急いで追いかけてきたらしい。
「な、なにかご用ですか?」
「アリちゃん、今日ヒマ?」
「今日は特に――」
「なら乗れよ」
 えっ?
「乗れって?」
 佐藤くんは、自転車の後ろを指さして。
「こーこっ! 連れて行きたいトコあんだ。どーしても、こないだのお礼したくって」
 連れて行きたいトコ? こないだのお礼?
「そんなのいいです、いいです! 気にしないでくださいっ!」
 あたしは精いっぱい断った。
 だけど、佐藤くんはガシッとあたしの腕をつかんで、
「そういうわけにはいかねー。義理を欠くなんてのはオレの仁義に反するんだ」
 と、どうしても離さない。
 なに? なに? 仁義ってなんなの??? まったく意味分かんないんだけど!
「ちょ、ちょっとの時間だけなら……」
 佐藤くんの圧倒的な迫力におされた結果。
 とうとうあたしは自転車の後ろに乗ってしまった。
 二人乗りなんて、校則違反なのに……。
「いいか、しっかりつかまってろよ」
 佐藤くんはそう言うと、突風のように自転車を走らせた。
「きゃーっ!」
 すごいスピード! まるでジェットコースターみたい。
 このままじゃ道路にふり落とされちゃうよーっ!
「あぶないからジタバタすんな! しっかりオレにつかまっとけって」
 佐藤くんの背中に……?
 ガタッ! と自転車が大きく揺れた。
「わあっ!」
 思わず佐藤くんの背中にギュッとしがみついちゃった。
「そーそー。それでいい。それでいい」
 佐藤くんが横目でほほえむ。
 広くて大きな背中からじんわりとあたたかい体温が伝わってくる。
 ほ……ほんとうにいいのかな?
 危険だから仕方ないとはいえ、こうやって男の子にずっとくっついてるなんて。
 あたし、今まで男の子とろくに手もつないだことないのに。
 心臓がずっとバクバクしていて、うるさすぎるくらい。
 ふり落とされるんじゃないかってハラハラ。
 それに、男の子の背中にしがみついてるドキドキ。
 うわぁ、はじめてのことばかりでどうにかなっちゃいそう!
 ほわっ。
 柑橘系のいい香りがあたしの鼻をかすめた。
 確か、こないだ佐藤くんに抱き上げられたときもこの香りがした。
 佐藤くん、いつもコロンかなにか使ってるのかな? それともシャンプー?
 全身は相変わらず、カーッ! と、ふっとうしてるみたいに熱い。
 でも、この香りをかいでると不思議と落ち着くな……。

「……ゃん、アリちゃん」
 佐藤くんに名前を呼ばれ、あたしはパチッと目を開けた。
「着いたぞ」
 と、佐藤くんが自転車を停めたのは古ーい雑居ビルの前。
 え? ここ?
 ここってオンボロなビルにしか見えないんだけど。
 佐藤くん、どうしてあたしをここに連れて来たかったんだろう?
 も、もしかして!
 あたしの頭にフッと考えがよぎる。
 さっきは突然の自転車二人乗りでついボーッとしちゃってたけど。
 かんじんなこと忘れてた。
 佐藤くんって、担任の先生ですら手のつけられないほどの不良なんだよね?
 お礼とかなんとか言って、こういう人気のなさそうなビルに押しこめて、お金とかぶん取る気じゃ……。
「やっぱり帰りますっ!」
 あたしは自転車からパッと下りると、歩いて引き返そうとした。
 けれども。
「待った待った!」
 と、佐藤くんに肩をつかまれた。
 わーん、なんてこのひとすばやいの? 逃げたくても逃げられないよー。
「確かにアリちゃんがドン引きするほどこのビルきたなく見えるけどよ。店んなかはそうでもないから」
「お店……?」
 頭に?マークが浮かんでるあたしに、佐藤くんは深くうなずく。
「だまされたと思って、とにかくついて来てくんねぇ? きっとアリちゃんが気に入るモンも一つくらいあるはずだから」
 あたしが気に入るもの?
 だまされるのは正直イヤだけど――。
 もしも少しでもまずい気配がしたら、すぐに警察呼ぼう!
 こうしてあたしはスマホ片手に佐藤くんと雑居ビルに入ることに。
 ビルの一階にはこれまた古びたエレベーターと階段。いろんなチラシとラクガキだらけの壁にはビル内の案内図があった。
「ここの二階なんだ」
 ふたりで古いエレベーターに乗りこむ。
 いったいこのビルになにがあるんだろう?
 いつまでも緊張がおさまらないでいると、ビーッ! とブザーが鳴り二階に到着。
 そして、ドアが開くと。
「ええっ?」
 パーッと視界に飛びこんできた、きらびやかな照明の光と、突然あらわれた光景に、あたしは目を丸くした。
「こ……これは!」
 目の前にも。あっちにも、こっちにも。奥のほうにも。
 広いフロアのいたるところ、クレーンゲームだらけ!
 人気キャラクターのぬいぐるみをはじめ、お菓子にフィギュア、家電製品、美容器具までいろんなクレーンゲームがそろってる。
「ここ、行きつけのゲーセンなんだよ」
 と、佐藤くん。
 ゲーセン?
 デパートのゲームコーナーなら行ったことあるけど。
 あたし、ゲーセンなんてはじめて来た!
「ゲーセンって、学生だけで来てもいいんですか?」
 アワアワしているあたしに、
「ああ。市の条例で夕方の六時までなら中学生でも出入りOKなんだ」
 だから心配すんな、と佐藤くんがあたしの肩をたたく。
「そんでアリちゃん。このなかでなんか……欲しいモンある?」
 佐藤くんの顔が心なしか赤くなった。
「えっ?」
 このクレーンゲームのなかで?
「はじめはこないだのお礼に店でなんか買おうと思ったんだけど、オレ、アリちゃんの好きなモン知らないし、女の子向けの店に入るのはちょっと恥ずかしいから、ここならいいかなって思って。ほら、女の子ってぬいぐるみとか好きじゃん?」
 佐藤くんはポリポリとほっぺたをかいてる。
 じゃあ、お礼っていうのは、ホントにあたしのために?
「そんな! 悪いです。別にあたしなにもいりませんから!」
 すると、佐藤くんはとまどったように、
「えっ、アリちゃんぬいぐるみキライなのか?」
 ちがーう! そういうことじゃなくてっ。
「エンリョすんな。好きなモンがあったら、なんでもオレが取ってやっから」
 えぇーっ、そんなこと言われても困っちゃうよ。
 どうすればいいんだろう、と視線を泳がせていると。
 ん? あれって――?
 あたしの目に、見覚えのあるぬいぐるみの入ったクレーンゲームが映った。
 近づいてみると、やっぱり!
「うわぁ、『もこフレ』だ!」
『もこフレ』こと、『フワもこフレンズ』はあたしの大好きなキャラクター。
 ふわふわでモコモコした『もこフレ』っていうキャラが何種類もいて、みんなそれぞれ個性的でとってもかわいいの。
 あたしがふだん使ってる文房具やハンカチ、マグカップなどなど、みんな『もこフレ』でそろえてるんだ。
「アリちゃん、それ欲しい?」
 ほわわーん、と、目を輝かせてクレーンゲームを見つめているあたしのとなりに佐藤くんがやって来た。
「ほ……欲しいっていうか、あたしこのキャラクターが好きで」
 佐藤くんは、チラッとクレーンゲームに目をやると、
「あー、このまんじゅうの妖精みたいなやつ? なら取ってやるよ」
 カチャン、と百円を入れた。
「いいんですか?」
 佐藤くんは、フンと鼻を鳴らして。
「いいに決まってんじゃん」
 このひと、親切なのか、無愛想なのか分かんないなぁ……。
 佐藤くんはクレーンゲームのなかにコロコロ並んでいる『もこフレ』のぬいぐるみを見ながら、
「なんかいろんな色がいるけど、どれがいいんだ?」
 とたずねた。
「え、えーと。あたしのお気に入りはメルルンで。でもフニャコも好きです」
「メル……?」
 佐藤くんは、理解不能と言わんばかりに顔をしかめた。
 ヤバい、機嫌悪くなっちゃったかな?
「ごめんなさい! ピンクの子が好きで、白の子も捨てがたいってことです。だけど、全員大好きで――」
「分かった、ピンクだな」
 佐藤くんは真剣なまなざしでクレーンゲームを操作しはじめた。
 クレーンがメルルンの真上でピタッと止まる。
 佐藤くんがカチッとボタンを押すと、ゆっくりとクレーンが下りはじめ、メルルンのぬいぐるみをつかんだ。
 けれどもぬいぐるみは、するっとクレーンからずり落ちた。
「あっ、惜しい!」
 ところが、佐藤くんは顔色を変えずに、
「いや、大丈夫だ」
 と、つぶやいた。
 ぬいぐるみのタグがクレーンのワイヤーにうまく引っかかり、メルルンのぬいぐるみは落ちずにぶら下がっている。
 すごい!
 そのままスルスルと運ばれていき、コトンと景品口に落ちた。
「ほらよ」
 と、佐藤くんがあたしにメルルンを手渡す。
「わぁーっ!」
 ピンクのふわふわの身体に、真っ赤なリボン。くりくりっとしたまん丸なおめめ。
 やっぱりかわいいなぁ~!
 あたしはメルルンをギュッと抱きしめた。
 クスクスッ。
 耳元で佐藤くんの笑い声が聞こえる。
「あ、あたし、ついはしゃいじゃって――」
 と、顔を上げると。
「すっげーうれしそう。ホントにそのキャラ好きなんだな」
 佐藤くんがニッ、と目を細めてる。
 わぁ、佐藤くんのこんな笑顔はじめて見た。
 今までコワいひとだとずっと思ってたけど、笑ってる顔、ちょっとかわいい。
 なーんて思ってたら怒られちゃうかな?
「あの、これどうもありがとうございます!」
 あたしがペコペコッと頭を下げると。
「いーってことよ。えーっと、次は」
 佐藤くんは、クレーンゲームにまた百円を入れた。
「え? そんなっ、もういいです。あたしこれで十分!」
「でも、アリちゃん言ってただろ? このまんじゅうの妖精みたいなやつ全員好きだって。取れるぶんだけ取ってやっから」
 まかせとけ! と、佐藤くんはクレーンを操作する。
 それ、まんじゅうの妖精じゃなくて、『もこフレ』なんですけど……。

 ところが、それから十五分後。
「おかしい。なんで取れねぇ?」
 うまくいったのは最初だけで、佐藤くんはそれからひとつもぬいぐるみが取れなかった。
「しかたねぇ、もう千円使うか」
 熱中しすぎてつかれたのか、腕でひたいの汗をぬぐいつつ、サイフから千円を取り出そうとしている佐藤くん。
「こ……これ以上はやめてください! あたしのために、大金なんか使わないでっ」
 あたしは、あわててその手を止めた。
 このペースでクレーンゲームにお金つぎこんでたら、佐藤くんのお金がみんななくなっちゃう。
 佐藤くんは、ふうっと息をはいて。
「でも、オレもっと見たいんだよ」
「なにを?」
 すると、佐藤くんはあたしの顔をのぞきこんで、
「アリちゃんの喜んでる顔」
 と、ほほえんだ。
 え……っ?
 あたしは驚いて佐藤くんを見つめた。
「さっき、ぬいぐるみ手にしたときのうれしそうな顔、すっげーかわいかった。オレ、アリちゃんのそういうところ、もっともっとたくさん見たい」
 かわいい? あたしが?
 佐藤くんから、そんなこと言われるなんて思ってもみなかった。
 ほっぺたがほわほわ、熱くなってる。
「おっ、今のその顔!」
 佐藤くんの声がはずむ。
「顔?」
 あたしの顔がどうかしたのかな?
「アリちゃん、手に持ってるぬいぐるみにそっくり。目がビー玉みたいにキラキラしてて、顔がまんまるで、ピンクになってる。あはは、かわいい!」
 佐藤くんてば、おなかを抱えてケタケタ笑ってる。
 あたしがメルルンにそっくり?
 メルルンは確かにかわいくて大好きだけど――。
 つまり、佐藤くんには、あたしも『まんじゅうの妖精』っぽく見えるってこと?
 かわいいって、そういうイミかぁ……あたし、からかわれたんだ。
 ガクーッ! と一気にヘコんでいると。
 佐藤くんが、あたしのほっぺたを両手でむにっとつまんだ。
「な、なにふるんでふかっ!」
 あたしは佐藤くんに怒ってみせたけど、ほっぺたをつままれてうまくしゃべれない。
「おぉ、やっぱり。ぬいぐるみといっしょでもっちもち」
 ひとの気も知らないで、ふふふっ、と無邪気に笑う佐藤くん。
 も……もう許さないっ!
「これ以上、あたしで遊ぶのやめてくださーいっ!」
 両手を上に広げて大声でさけぶと、佐藤くんはパッとあたしから手を離して、二、三歩後ずさった。
「ゴメン。そうだよな、アリちゃんをおもちゃにするなんてよくなかった」
 もう、今さらそんな反省したっておそいって。
 やっぱりこのひと、女の子をいじって遊ぶのが好きなだけなんじゃない?
 親切だな、って一瞬でも思ったのがバカみたい……。
 小さくため息をついた瞬間。
「やっぱり、遊ぶんならふたりいっしょがいいよな!」
 ギュッ、と佐藤くんがあたしの手を握った。
 えぇー? どうしてそうあたしのことかまうのー?
 佐藤くんはあたしの手を引っぱったまま、どこかにつれて行こうとする。
「あの、今度はなにをするつもりなんですか?」
 ビクビクしているあたしに、
「なにをしたいかはアリちゃんが決めな。いろいろあるから」
 と、佐藤くんは笑った。
 いろいろある、って?

 佐藤くんにつれて来られたのは、ビルの三階。
 そこには車のレースに、格闘、パズル、メダル……などなどたくさんのゲームがそろってる。
 そうだよね、ここはゲーセン。クレーンゲームのほかにもいろいろあって当然か。
 だけどあたし、ふだんゲームやらないから、なにをしたいかって言われても――。
「あっ!」
 あそこにあるの、太鼓のゲームだ。
「アリちゃん、太鼓できる?」
 佐藤くんに、あたしはぶんぶんと首を振る。
「あたしはやったことないんだけど、友だちにすすめられてゲームの動画を見たことがあって」
 あれはワクワクしたなぁ。
 スゴ腕プレーヤーが神ワザ演奏を披露してて、あたしと芙美ちゃんふたりして動画見ながら大盛り上がりしてたっけ。
「じゃあいっしょにやろうぜ。見てるよりも、実際にやったほうがおもしろいから」
 そ、そうかな? あたし、まったくの初心者なんだけど。
 それなのに!
 佐藤くんが選んだのは、いちばんむずかしい地獄の鬼モード。
「ひどい! そんな難関レベル、あたしできません!」
「心配ねーって。このゲーム、協力モードもあるから。アリちゃんはアリちゃんのペースでやってみな」
 余裕の佐藤くん。ほんとうに大丈夫かな?
 そして、曲が始まると。
 ドドドドドドドドド……!
「うそっ!?」
 佐藤くんはまったくミスすることなく、目にも止まらぬ速さで太鼓を連打していく。
 なんて華麗なバチさばき。まるでプロのドラマーみたい。
「すごいっ! すごいです、佐藤くん!」
 こないだ動画で見たスゴ腕プレーヤーに負けないくらいの神ワザ演奏!
「ちょ、オレのほうばっか見てねーで、アリちゃんもたたけよ。二人協力モードなんだから」
 あ、そうだった。
 あわててバチをにぎり、画面を見ながら勢いまかせにドコドコ、ドコドコ。
 うわー、むずかしい! 佐藤くんみたいにうまくできないよ。
「いいぞ、アリちゃん。得点上がってきてる」
 ホント? なら、もう少しがんばってみようかな。
「佐藤くんはどうしてこのゲームがこんなに得意なんですか?」
 佐藤くんは依然として完ぺきな演奏を続けながら、
「オレ、小学生のときからずっとやってるから。だけど、オヤジや兄ちゃんには全然かなわねぇんだよな」
 と、くやしそうにつぶやいた。
 そうなんだ。佐藤くん家って、ゲーマー一家なのかな……?
 演奏終了。得点は、なんと! 新記録だって。
「ふーっ、スカッとした!」
 たくさん太鼓をたたきすぎて、手首が痛くなっちゃったけど、おもしろかったなー。
「おつかれアリちゃん。ははっ、ずいぶんスッキリした表情してるな」
「うん、このところいろいろ悩んでたけど、いいストレス解消に――」
 って、そうだった!!!
 あたし、佐藤くんにまちがえてバレンタインプレゼント渡したこと、まだ言えてないんだった。
 それなのに、こんなふうに遊んでていいのかな……。
「どうした? 急に元気なくなったな」
 ぎくっ。
「ううん、なんでもないんです! それよりも、今日はありがとうございました。メルルンまで取ってもらっちゃって」
 佐藤くんにお礼を言うと。
「いーってことよ。それに、もうやめろよ、そんな言いかた。せっかくオレら友だちになったんだし。もっと気楽に話してもらって全然かまわねーから」
 友だち――。
 その言葉にズキン、と胸がいたむ。
 あたし、ホントのことを言い出せないままでいいの……?