仕事では毎日佐藤さんに怒られたり笑われたり呆れられながらも「ほぼ」順調に新しいことを覚えていった。

「お前ってホントに鈍臭いヤツだな。」

佐藤さんはそう言いつつ根気よく指導してくれた。

正式な歓送迎会を前に販促課のメンバーと飲みに行ったりもして私も徐々に空気に慣れていった。

残業して帰宅すればクタクタで食事して入浴して寝るだけで精一杯だった。

だから世の中のクリスマスムードなんて私には無縁だった。

ほとんど毎晩メールか電話で成沢からコンタクトがあった。事務連絡のように

「明日は6時ね。」

とか

「二度寝しそうな空気だったら絶対起こして。」

とか。

「なんで私が・・・」

と思いつつ私は律儀に毎朝モーニングコールをし毎朝一緒に通勤した。


「乾杯」

支店内での納会の乾杯が済んで料理をつまんでいた。

「私、そろそろ帰ります。皆さんはまだ帰りませんか?」

絵理が言った。

「うん。私もそろそろ。皆に挨拶だけしてから。絵理、予定あるなら先帰っていいよ。つかまらないうちに。」

「じゃあ私はお先に失礼します。よいお年を。」

「じゃあね。また来年。」

絵理と別れてから上司と先輩に挨拶をして回った。