「あら、優希だってかわいいわよ。きちんとお化粧すれば。」

母はよく言う。でも親の贔屓目のフィルターを通したところで美人になれるわけではない。

きちんとお化粧をしたところで平凡は平凡なままだ。アイライナーやコンシーラーやカラコンで美人のオーラが霧のように立ち上ってくるわけではないのだ。

多分母に似ればよかったんだろう。母は今でこそどこにでもいるようなおばちゃんだが若い頃はかなり美人だったようだ。

オバサンとはいえ、生来の整った顔立ちと綺麗な目はいまだに健在だ。

しかし意地悪なDNAは皮肉なことに2人の娘に父親似といういたずらをした。

鏡を見るたび、自分の顔にはっきりと父の遺伝子の所業を否応なしに見つけさせられるようでがっかりする。

母にしても誰にしても『女の子はパパに似たほうが幸せって言うじゃない。』などと無責任なことを言う。

でも幸せになれるかどうかはともかく、うちの場合は『女の子なんだからママに似たほうが美人でよかったのに』ということは否めない。

しかも女に生まれた以上、美人にこしたことはないんだから。きれいごとは沢山だ。

世の中、美人には特典がいっぱいあることくらいこの歳になれば知っている。