辺境伯家は子沢山である。男5人女4人の大所帯。上から男女男女女男男男女の順である。私は三女であるローズリアス様に仕える執事である。ローズリアス様は今年16歳になられる。この国の貴族は冬時期のみ10歳から学園に通い、18歳で卒業する。
今の時期は秋、学園に戻る準備が必要なのにローズリアス様ときたら

「ローズリアス様がまだ起きません。」

「はあ仕方ありません。私が行きましょう。」

「ローズリアス様っ!起きてください!もうお昼ですよ!!」

豊かな癖のある金髪がシーツに広がっている。黒色の肌触りの良さそうなベビードールがはだけ…ベビードール!?

「ローズリアス様!?なんという格好をしているのですか!!」

「んっん、マシューうるさいわ、もぅちょっとだけ寝させzzz」

なんちゅう声!!イケナイ気持ちにさせる色っぽい声です。我が主人ながら恐ろしい…!!

「/////いけません!起きてください!!」

毛布を剥ぎ取る。が剥ぎ取らなければよかったと後悔した。
黒のベビードールから覗くすらりとした陶器の柔肌。投げ出された御足はしなやかで。白と黒のコントラストが美しい。ベビードールからはまろい臀部が見え紐の下着が…!!

「乙女がなんという格好を!!」

「あら、マシューにしか見せてないからいいじゃない。」

むくりと猫のようなしなやかな身体
乱れた髪が少しだけ顔にかかり影を作る
ベビードールが肩からおち
胸元の谷間がくっきりと。前屈みになると乳房がふるりと揺れ色の変わる部分が見え…!!

抑えろ俺の理性!!

「ねえマシュー、お腹すいたわ。食べさせて。」
「ねえマシュー、歩くの疲れたわ。抱っこして。」
「ねえマシュー、眠たいわ。膝枕して。」
「ねえマシュー」
この甘えたがっ!!



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私はマシューが好き。家族公認である。マシューだけ知らない。こんなにもアピールしてるのに。鈍感すぎる男よね、そんなところも好きだけれど。

学園はつまらないわ。王子がいるのがよくないわ。社交場だからそれなりにするけど。辺境伯はそれなりに高い地位よ。婚約者候補にはいってしまうほどに。だからあえて王子好きアピールをするの。クラスは中級クラス、平均的なクラスだけれど婚約者候補に入る令嬢が中級クラスというのは良くない。そして婚約者候補の1人である侯爵家の娘の腰巾着をするの。そうしたら目立たないわ。

ドレスは少し婀娜っぽく。豊かな胸元を強調するように。マシューにしか見せてたくないけど仕方ないわ。マシューの場合は破廉恥ですと言いながらストールを被せてくれるのよ。耳を真っ赤にしながら。可愛いわ好き。

お茶会のお誘いの手紙にはこれでもかと香水をつけて。王子を見るときは熱の篭った視線を向け。声は媚びるように高く。胸元を寄せながらするのがポイントよ。

高潔な王子はこれだけで嫌がり距離をとるわ。婚約者候補から外れるわ。これを自然にこなしてこそ完璧というものよ。

王子に気に入られず選ばれなかった負け令嬢は社交場に居られなくなり泣く泣く田舎に引き込む。完璧な流れよ。そしてマシューと結婚するの。社交もしなくてもいいのよ。着飾ったマシューを見せるだなんてことは断じてしないわ。私だけの特権よ。

マシューと結婚するためなら頑張れるわ。マシューを落とす方が大変だもの。 


今日も今日とて侯爵家の娘の腰巾着をする。でも彼女のこと嫌いじゃないのよ。気が強くて、派手好きの浪費家。王子が彼女を好んでないことも知ってるわ。彼女は目立つことが好きで常に流行に気を遣っている。彼女は流行りの舞台やドレス、宝石の話をよくするがそれ以外の書物や各貴族が収める土地の特産品の話もする。気が強くて言い方がきついが優しくないわけではないの。
一度彼女が庶民にキツく苦言したことがある。それに対して王子は彼女を非として庶民を庇った。彼女の本質を見ようとしない王子は好きじゃない。彼女は言い方はきついが庶民を虐めたわけではない。学園は平等だと思い王子に近づこうとした庶民の女に対して貴族としての対応をしたのだ。平等だとしても身分は絶対的だ。そこを庶民は弁えていなかった。あろうことか手作りのクッキーを渡そうとしたのだ。しかも王子はそれを受け取りその場で食べたのだ。毒味もせずに。馬鹿である。

そんな馬鹿王子に見染められるだなんて鳥肌ものだわ。侯爵家の娘も馬鹿王子に構ってないで自身に合う令息を見つければいいのにと思うわ。例えば馬鹿王子の護衛である無口な騎士とかね。侯爵家の娘を見つめる視線の熱量が多すぎて火傷するわ、バレてないと思っているのかしら。



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馬鹿王子は卒業式で庶民の女に求婚したわ。馬鹿すぎてびっくりしたわ。王子としての肩書きではなく自身を見てくれるから選んだ、王族としての地位を放棄してもいい、ですって。職務怠慢もいいところだわ。
馬鹿王子は去勢され庶民の女と結婚するそうよ。庶民の女は引き攣った顔してるけれど。

びっくり卒業式が終わり辺境伯家へ帰ろうと準備していたら侍女からなんとマシューが迎えに来ると言うのよ。久しぶりのマシュー、マシューが迎えに来るのは初めてよ!急いでマシューを誘惑する準備へ変更よ。



「お迎えにあがりました、ローズリアス様」

馬車までエスコートし、中に入るとローズリアス様が私の手を引っ張る。使用人が主人と一緒に馬車に乗ることはないがローズリアス様の場合は違う。
男マシュー、ローズリアス様の我儘には頑として抗う所存である!

結論、無理。なんてことでしょう、この令嬢可愛すぎる。あろうことか私の隣に座り凭れる。良い匂い柔らかい良い匂い。ふにゅりとローズリアス様の胸が私の腕に挟まる。そう挟まるのである。腕が幸せ…至高の柔らかさ、待て。コルセットしてなくね??こてりとローズリアス様の頭が私の肩に。マシューと甘えた声は心地よく。拷問かこれ。

「ねえマシュー、疲れたから頭撫でて」
「ねえマシュー、喉乾いたから飲み物飲ませて」
「ねえマシュー、お尻が痛いからマシューの膝の上に乗ってもいいわよね」
「ねえマシュー」

この令嬢言ってからの行動が早いんよ。もう膝の上にローズリアス様がおる!!やわこい感触、刺激過多!!限界突破!!

「ローズリアス様いけません、私も男です。ローズリアス様のような可愛すぎる女性にそういうことされたら我慢できません。」

「そういうことって?」

「そういうことはそういうことなのです!私だからいいものを!他の男にしていたらローズリアス様は食べられてしまいますよ!」

「他の男に食べられないようにマシューが食べればいいじゃない?」

「なっ!!!」

「ねえマシュー、お尻に何か硬いものが当たっているわ??」

膝の上でローズリアス様は小悪魔的に首を傾げる。固まる私に何を思ったかローズリアス様は体勢を変えてきたのである!!
互いに正面を向き合い、膝の上にローズリアス様がいる状態はまるで恋人。執事と令嬢の距離ではない。私の首に腕を回し身体密着させてくるこの令嬢!!近い!!
あ、柔らかい良い匂い唇ぷるぷるしてる。谷間が見えて…待て待て待て!!

「マシュー??」

鼻血出た。


「ローズリアス様お願いします。私はローズリアス様を1人の魅力的な女性としてしか見れなくなります。こんな邪な想いを持つ男は執事失格です。これ以上私で遊ばないでください。」

鼻血出しながら言う台詞じゃないな。ださいわ。

ちゅう

「ねえマシュー。好きよ。どうしたらいいの??」

思考が止まる。え、えこの可愛い生物は何を言った??何をした??唇柔らかっ!!幻覚か??夢か??

「マシュー!?」

気絶した。

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目が覚めるとローズリアス様に膝枕されてました。やわこい枕、視界は乳!!乳!?

慌てて起きあがろうとしたが乳で止められた。幸せな重みである。

「ふがふが」

「ねえマシュー、私をお嫁さんにしてくれる??」

「ふがふが」

「ふふふ。はいしか聞かないけど」

横暴な!!はいしか言わないけれども!!



「ねえマシュー、なでなでして」
「ねえマシュー、抱っこして」
「ねえマシュー、ちゅー」

はい喜んで!!以外の選択肢がない!!