並木が亡くなってから、1ヶ月が経った。加藤と吉田の元に、佐藤がやってきた。「なぁ並木の恨み、俺たちが何とかしないか。要は、犯人を見つけるってことさ」「うん、でもどうやって?」加藤が答えた。「うーん」3人は頭を捻った。答えは見つからない。「とりあえずさ、神ノ木夫妻のところに行ってみない?」吉田が言った。「えー怖いじゃん」と加藤が言ったが、佐藤は「お!それいいじゃん。それでなんとか自白させて、警察に引き渡す作戦で行こう!」と乗り気で、もう行く準備をしている。加藤も、しぶしぶ2人に続いた。神ノ木夫妻の家に3人が着いた。誰も言葉を交わさない。ただ、アブラゼミのジリジリジリといった鳴き声だけが辺りに響き渡っている。「よし」佐藤がチャイムを鳴らした。内心「留守だったらいいな」とも願った。30秒程経って、加藤が「もう帰ろ」と足早に去ろうとしたその時、「はーい」と女性の声が響いた。3人は固唾を呑んだ。容疑者の妻だ。ガラガラと玄関の引き戸が開いた。「あら、こんにちは」神ノ木美里は、初めて会う3人を見て、目を細めた。「楓学生寮の並木の友人です」佐藤が自己紹介した。美里は一瞬戸惑った表情を見せたが、すぐに目を細め直し「上がって」と、3人に声をかけた。「いやここで結構です!」と、加藤が言ったものの、「そこじゃ暑いでしょ」と美里は言い、3人は中に入った。
