神ノ木は、容疑者として、村の人たちから村八分にされた。道を歩けば指さされ、工場内では後ろ指をさされた。神ノ木は、どんどん孤立していった。それでも、警察が逮捕できないのには理由があった。充分な決定的証拠がないのだ。何しろ、神ノ木の言い分はこうだった。初めて寮に入ったのは、妻の神ノ木美里が風邪を引いており、美里の代わりに回覧板を届けに来たのだ。初めてのことで道が分からず、辺りをしきりに見回していたのだ。並木が飲んだ牛乳瓶からも、神ノ木の指紋は採取できない。これでは、警察もどうしようもなかった。