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「あーもう疲れた」「もうちょっとじゃん、頑張りなよ」こう声を掛け合いながら、加藤静子と吉田百合は、朽木大学のA棟で、放課後に物理の宿題をしていた。もっとも、吉田は加藤に宿題を教えていた。2人は1回生の時から楓学生寮で過ごしてきた親友だ。朽木大学の学生だけが、楓学生寮に入れる。「やっと、終わったぁ」加藤がそうつぶやいて欠伸をしようとしたその時、2人しかいない講義室の扉がバンッと勢いよく開いた。佐藤哲治だった。「おい!大変なことになってるぞ!」佐藤の話しは要はこうだった。2人と佐藤と同じく楓学生寮で暮らす、並木光輝が、授業中嘔吐が止まらなくなり、救急車で運ばれたものの、その後死亡したのだ。死因は、毒物だった。楓学生寮20人分の瓶牛乳が早朝寮に届くことになっているが、朝に皆飲んだ空の瓶を調べたところ、そのうちの1つから、毒物が検知された。それを、並木が飲んだのだ。