演歌界のイケオジ『神月京介』の恋心

「きょうくん、私の部屋の隣でしょ?」
「うん、そうだよ」

「あのね、さっきね、聞こうと思って聞いた訳じゃなくて、聞こえてきたんだけど電話で……」

 聞かなかったことにしようと思っていた電話の話。彼の話し方がいつもと違って少し怖かったし、もしかして大変なことに巻き込まれているのではないかと思い、深呼吸してから訊いてみた。

「報復だとか、なんかそういうワード聞こえちゃったんだけど、気になっちゃって……」

「……いわゆる、裏社会でも動いてるんだ」
「裏社会……もしかして極道とか?」

 彼は静かに頷いた。

 彼から『裏社会』という言葉を聞くとは思っていなかった。『神月京介』とは一生無縁で遠い言葉だと思っていた。もちろん私とも無縁な別世界。

 動揺を隠しきれずに自分の目が泳いだ。
 彼は動揺を隠せない私の顔をじっと見つめてきた。