「紬希、俺になんか隠していることあるんじゃない?」

俺がそう言うと、紬希は、寝ぼけ眼からハッとしたような目つきに変わった。

「なんにもない、けど、」

俺は、紬希が嘘をついている時の仕草を知っている。
はぐらかすときはいつも、親指と人差し指を擦り合わせるような仕草をするのだ。

紬希は、今まさにその仕草をしていた。