俺は声が出なかった。
ただ、呆然と、目の前で起きている奇跡の様子を見ていることしか出来なかった。

「つ、むぎ、?」

やっと出た声は、俺の人生の中で1番情けない声だった。

「あ…さひ、」

久しぶりに聞く紬希の声。酷く掠れていたものの、しっかりと言葉を発していた。



俺は、紬希に抱きついた。

「紬希…死んだかと思って…俺、」

このひと月の間に、何度も流した涙。
今流れている大量の涙は、これまでの涙とはわけが違った。




俺は、紬希の額にキスをした。