脳死と判断されるまでのタイムリミットは、1時間となった。

ひと月というのは長いようで早く過ぎた。

正直、心臓も弱く、おまけに脳も機能していないとなると、

「……紬希は、死ぬ、」

俺は、1番受け入れたくない現実を口にした。

屋上で、カフェオレを飲みながら。

紬希は、この夕日に溶け込んで消えてしまうのだろうか。

俺は、手元の腕時計を見た。

「あと、30分。」

俺は、初めて時間という概念を恨んだ。

時間なんて無ければ、タイムリミットなど存在しないのに。



紬希が心臓の病気を告げた時、俺は彼女を強く叱った。

もう少し、優しく言えばよかった。

紬希は悪くない。



__今になって思っても、もう遅い。

俺の中の潜在意識が、俺の耳元でそう囁いたように感じた。