極悪人の抱き枕になりました。

そんな中でも鞄だけは握りしめていたのだと思うと、ちょっとおかしかった。
これのおかげで伊吹はグッスリと眠ることができたんだから、良しとしよう。


「仕事をするのか?」


聞かれて夏波は左右に首を振った。
残念だけれど、仕事場所は母親にバレているからすぐに店舗で再開することは難しそうだ。

まずは予約をキャンセルしてしまったお客さんたちに謝罪のメールを送って、ネット注文で再開したほうがいいだろう。
そう考えていたときだった。


「そうだよな。職場はヤクザにバレてるもんな」


と、伊吹が深刻な表情で言った。
夏波は戸惑い、まばたきを繰り返す。

夏波が懸念していたのは伊吹が職場に来ることではなくて、母親が職場に来ることのほうだった。