極悪人の抱き枕になりました。

家に帰らずに友達のアパートの部屋に泊めてもうらことも多くなった。
そんな中でも、夏波は常に自分の夢を実現させるための努力をしてきたのだ。

今が泥沼の底だとすれば、そこから這い上がるためにもこの夢を成功させる必要があると信じて。
でも、夏波がそうして努力している間に母親は男からもらった金でホスト遊びをしていたのだ。

そうわかると全身から力が抜けていくようだった。
挙句の果てにたった30万円で売られてしまった。

今まで自分が頑張ってきたことがなんだったのか、わからなくなってきてしまう。
気がつけば夏波の頬に涙が流れていた。

泣きたくなんてないのに次から次へと溢れ出した止まらない。
手の甲で何度拭ってもダメだった。


「無理はしなくていい」


すぐ近くで伊吹の声が聞こえたかと思うと、次の瞬間その筋肉質でたくましい両腕に包み込まれていた。
見た目に反して背中をさする手の動きは繊細で優しい。

服に染み付いている伊吹の匂いが、今はすぐ近くから強く香ってくる。