「その時はまだ……。でもお断りしましたよね、柊さん。それに隆君の為だというなら私ではダメです。隆君から大好きなママのはなしを何度も聞かされています」
柊さんはビクッと身体を震わせた。俺も言った。
「隆君は何度もママに会いたいと看護師に話しているそうです。さっきも呼んでいましたよね。柊さんも一緒に聞いていましたよね」
院長が美鈴に話しかけた。
「平田さん。柊さんが今後はこういうことをしないと約束してくれたら、警察には話さないでくれるかな?」
「な、け、警察?」
柊さんがこわばった顔で言う。
「証拠もあるんですよ。電柱のところで彼女を見ていた姿とか、今日の話している内容ですとかね。もちろんうちの警備員の話も。柊さん。おおごとにしたくないんです。お子さんのためにも……」
「なんだよ、なんだよ、みんなして馬鹿にして!わかったよ、美鈴さんなんてもうどうでもいい」
美鈴はおびえたようにしている。院長に促されてふたりで外に出た。



