小児科医は癒やしの司書に愛を囁く


 後ろからまた緑のスクラブを着た先生が現れた。檜山先生だ。私の隣にぽんと横から本を出す。
 
 「先生も借りようかな。そしたら、美鈴お姉さんに頭撫でてもらえるのかな?これ貸して」

 「檜山先生、横入りはだめです。悪い子には頭なでなでしません」

 「檜山、ふざけんなよ。俺がちゃんと先に並んでるのに……」

 何故か動物図鑑を手にした弘樹先生が列の後ろに並んでいる。
 見ていた絵美先生はプッと吹いて笑っている。子供達も笑い出したり、檜山先生をいけないんだーと指さして怒ってる。

 「いい大人が『癒やしの美鈴さん』を取ったらだめでしょ。ごめんなさいね、美鈴さん」

 子供達を笑わせるためにいろいろなことを小児科の先生はするのだ。これもそのため。そうじゃないと、おびえて治療を受けたがらない子が増える。

 並んで借りた弘樹先生は背をかがめて頭を私に出した。

 「え?先生、本気ですか?」

 「あ、なに?人によってしたりしなかったりなんてするんだ?美鈴お姉さん意地悪だな」