「そうだろうな。お父さんも同じ事を言っていたよ。夫と娘がいるのに見えていなかったってね。お父さんは相当なショックだったようだ」

「そうだと思います。弟が亡くなったとき、私ももちろんショックでした。可愛い弟でしたし、いなくなって一人になってから寂しくて。でも、父と私は前を向いて行こうと思っていましたが、母は抜け出せなかった」

「君は父と先にこのことを話したんだってな。俺は父に当時のことを、もしや君の名字を聞いたらわかるかもしれないと思って父に確認したんだ。父は君に会って初めて気づいたといっていた。面影が残っているのもそうだが、フルネームと顔を見たら年齢的にも間違いないと確信したみたいだった」

「私も先生にお会いして、一気に思い出しました。あなたのお父様は本当に優しい先生で、私の頭をよく撫でて待っていて偉いねと褒めてくれました」

「……そうだったんだ」

「まさか、あの男の子が弘樹さんだったなんて。最後に話したときだけでなく、何度か会ってましたよね」

「うん。そうだね」

「私ね、弘樹さんも病院に入院している兄弟がいるのかなと自分と同じような人だと勝手に思ってたの。まさか、息子さんだなんて知らなかった」