「弘樹さん。色々ありがとう。大事なこと、話さないでいてごめんなさい」
弘樹さんは顔を上げて、箸を置くと、ため息をついた。
「俺がそのことに気づくのが遅れたからだな。絵本を見たときにすぐに気づけば良かった。絵本は誰でもが持っていそうだったし、まさかあのときの女の子が君だとは……」
「しょうがないですよ。私だって先生のことを見ても気づかなかった」
「しかも、うちの事情を先に話してしまった。病院が潰れた原因や両親の離婚に君の弟さんの事が遠因にあるかのように話してしまって、俺は本当に後悔した。すまない。謝らせてくれ」
「とんでもない、事実でしょ。父に聞いたんです。母が吹聴して病院を潰させたようなものだって……父に会って下さったそうですね。昨日父に呼び出されました」
「……そうか。黙って会ったりしてごめん。君へ先に言うべきかすごく悩んだんだんだ。もし、お父さんを怒らせたら君に迷惑をかける」
「そんな……父は弘樹さんをすごくいい人だと褒めちぎってました」
「でも、お母さんはやはり弟さんの事を気に病んで、病気になったんだな」
「しょうがないです。私が……いるのに目に入っていなかった。私にとってそのことの方がショックでした」



