「それは、誤解だ。忙しくなったんだ。檜山も休んでいて……説明しただろう」

「先生。そういうことじゃない。もし、縁談破棄の前の同居し出してすぐの頃忙しくなったとして、帰ってこなかった?」

 俺は返事に詰まった。確かにそうだ。あの頃は美鈴のストーカー問題もあり、心配で遅くなっても帰ってきていた。そして朝早く出ることも多かった。

「……やっぱり」

 俺は彼女の手をぎゅっと握ると、ゆっくり答えた。

「確かにそう言われたらそうだ。あの頃は君のストーカー問題も解決していなくて無事か心配で、帰れなくてもメールをして確認していた」

「……そして、遅くなっても帰ってきていましたよね」

「一度、夜中に戻ってきたとき、俺がベッドへ入り寝ていた君を起こしてしまった。それで、君も眠れなくなると仕事に差し支えるだろうと思ったんだ」

「それなら、別々に眠ればいいんじゃないですか?そうしたら帰ってこられたでしょ?先生は私に気をつかってそのことも言わない。お互いがお互いに気を遣う。疲れるだけでしょ?」