だが、それとは別に俺個人を医師として大事にしてくれていた。しかし佳奈美さんが本気になるにつれ、院長も彼女の相手として俺を受け入れ始めた。

 俺は本気で困っていたところだったので、美鈴のお陰で破棄出来て正直助かった。

 あの日から忙しくなった。檜山が体調を崩して休んでおり、医師が足りなくなった。病院で寝泊まりすることも出てきた。彼女も仕事があるから、夜中に帰って俺がベッドに入ると起こしてしまう。

 病院に寝泊まりするのは彼女を思ってのことだったが、それが今思えばいけなかった。

 一応、彼女の休みは図書館の休館日と覚えていたので、夜勤明けがその月曜日に当たって、アパートへもようやく連れて行けるかもしれないと思っていた。

 朝、病院から帰ると玄関に彼女の靴がない。靴箱にしまってあるのかと部屋へ入ると何か変だ。まだ寝ているのかと寝室を開けたがいない。

 風呂かもしれないと見に行くがいない。

「美鈴?」

 彼女の部屋をノックしても返事がない。もしや、こっちで寝てるのか?

 鍵がかかってないのでそうっと開けるとベッドは綺麗になっている。なんか変だ。慌てて、チェストを開けると何もない。